最終更新日 2026年1月3日
大切なご家族が亡くなられ、深い悲しみの中、相続手続きを進めなければならない状況は、精神的にも大きな負担となります。
特に「相続税申告」は、多くの方にとって初めての経験であり、その複雑さから戸惑うことも少なくありません。
「税理士なら誰に頼んでも同じだろう」
そう思われるかもしれませんが、実はその考えには大きなリスクが潜んでいます。
医師に外科や内科といった専門分野があるように、税理士にも法人税や所得税、そして「相続税」という専門分野があります。
相続税申告は、担当する税理士の知識や経験によって、納税額が数百万円、場合によっては数千万円も変わることがある、非常に専門性の高い分野です。 知識が不十分な税理士に依頼してしまうと、使えるはずの特例を見逃して税金を払い過ぎてしまったり、逆に申告漏れを指摘され、後から重いペナルティ(追徴課税)を課されたりするケースも少なくありません。
この記事では、相続で後悔しないために、なぜ「相続税に強い税理士」を選ぶべきなのか、そして、数多くの税理士の中から本当に信頼できるプロフェッショナルを見分けるための具体的なポイントを、分かりやすく解説していきます。
目次
「相続税に強い税理士」と「一般の税理士」5つの決定的違い
「相続税に強い」とは、具体的にどのような税理士を指すのでしょうか。
法人税や所得税を主に取り扱う「一般の税理士」との間には、明確な違いが存在します。
違い1:圧倒的な経験値と専門性(年間申告件数)
最大の違いは、相続税申告の取扱件数、つまり「経験値」です。
国税庁の統計によると、相続税の申告件数は年間約15万件程度です。 一方、日本全国の税理士登録者数は約8万人。 単純計算すると、税理士1人あたりの年間申告件数は1〜2件程度にしかなりません。
実際には、相続を専門とする一部の税理士事務所が年間数百件の申告を手掛けているため、多くの税理士は相続税申告をほとんど経験したことがないのが実情です。
相続税に関する法令や特例は頻繁に改正されるため、常に最新の知識をアップデートし、多様なケースに対応してきた経験が不可欠です。 相続税専門の税理士は、この経験値が圧倒的に違います。
違い2:納税額に直結する「土地評価」のノウハウ
相続財産の中で最も評価が難しく、税額に大きな影響を与えるのが「土地」です。
土地の評価方法は一通りではなく、その土地の形状、立地、周辺環境など、様々な要因を考慮して評価額を下げられる可能性があります。
例えば、以下のような土地は評価額を減額できる可能性があります。
- 形が不整形な土地(いびつな形の土地)
- 道路に面していない、または接道が狭い土地
- 騒音や悪臭など、周辺環境に問題がある土地
- 高圧線下にある土地
相続税に強い税理士は、路線価図を見るだけでなく、必ず現地調査を行い、役所での調査も踏まえて、あらゆる減額要因を見つけ出すノウハウを持っています。 この土地評価のスキル一つで、納税額が劇的に変わることも珍しくありません。
違い3:税務調査への対応力と「書面添付制度」
相続税申告後、税務署による「税務調査」が行われることがあります。
税務調査の対象になると、精神的な負担はもちろん、申告漏れを指摘されれば過少申告加算税や延滞税といったペナルティが課されます。
相続税に強い税理士は、税務調査で指摘されやすいポイントを熟知しており、調査官の質問にも的確に対応できます。
さらに重要なのが「書面添付制度」の活用です。
これは、税理士が「この申告書は、私たちが責任を持って適正に作成しました」という品質保証書のようなものを添付する制度です。
書面添付制度のメリット
- 税務調査のリスクが大幅に下がる: 税務署からの信頼性が高まり、調査対象に選ばれにくくなります。
- 意見聴取で終わることがある: 調査の前に、まず税理士への意見聴取が行われます。 ここで疑問点が解消されれば、実地調査が省略される場合があります。
- 加算税が課されない: 意見聴取後に修正申告を行えば、過少申告加算税が免除されます。
この制度は、申告内容に自信がなければ活用できません。
そのため、書面添付制度を積極的に活用しているかどうかは、税理士の専門性と責任感を見極める重要な指標となります。
違い4:二次相続まで見据えた提案力
相続は一度で終わりとは限りません。
例えば、父が亡くなった際の相続を「一次相続」、その後、母が亡くなった際の相続を「二次相続」と呼びます。
一次相続で「配偶者の税額軽減」という特例を最大限に利用して、配偶者が多くの財産を相続すると、その時点での相続税は大幅に抑えられます。 しかし、その結果、次に起こる二次相続の際に、子供たちが負担する相続税が非常に高額になってしまうケースがあります。
相続税に強い税理士は、目先の一次相続だけでなく、二次相続まで含めたトータルの税負担が最も少なくなるような遺産分割案をシミュレーションし、提案してくれます。
違い5:弁護士・司法書士など他士業との連携力
相続手続きは、税理士だけで完結しないケースも多くあります。
- 遺産分割で揉めてしまった場合 → 弁護士
- 不動産の名義変更(相続登記)が必要な場合 → 司法書士
相続を専門とする税理士は、これらの他の専門家(弁護士、司法書士、不動産鑑定士など)と緊密な連携体制を築いています。 これにより、相続に関するあらゆる問題をワンストップでスムーズに解決へと導くことができます。
失敗しない!相続税に強い税理士を見分ける7つのチェックポイント
では、具体的にどのような点を確認すれば、本当に信頼できる相続税の専門家を見つけられるのでしょうか。
以下の7つのポイントを、税理士との面談時に必ずチェックしましょう。
1. 相続税の「申告実績」は豊富か?
まず確認すべきは、具体的な「申告実績」です。
ホームページなどに「相談実績〇〇件」と書かれている場合がありますが、重要なのは実際に申告書を作成・提出した「申告件数」です。
【質問例】
「相続税の申告は、年間で何件くらい手掛けていらっしゃいますか?」
「先生ご自身が担当された案件で、特に印象に残っている事例はありますか?」
年間100件以上など、具体的な数字を公表している事務所は、それだけ経験が豊富である証拠と言えるでしょう。
2. 土地評価の実績とノウハウを具体的に説明できるか?
相続財産に土地が含まれる場合は、土地評価に関する質問は必須です。
【質問例】
「この土地の場合、どのような点が評価のポイントになりそうでしょうか?」
「土地の評価をされる際に、現地調査は行っていただけますか?」
「過去に、土地評価で納税額を大幅に減額できた事例があれば教えてください」
専門用語を並べるだけでなく、素人にも分かりやすい言葉で、評価のプロセスや減額の可能性について具体的に説明してくれる税理士は信頼できます。
3. 「書面添付制度」を積極的に活用しているか?
税務調査のリスクを減らすために非常に有効な「書面添付制度」を標準的に採用しているかを確認しましょう。
【質問例】
「こちらの事務所では、書面添付制度を利用した申告をお願いできますか?」
「書面添付制度を利用する場合、追加の費用はかかりますか?」
この制度の活用に積極的な事務所は、申告品質に自信があり、納税者の立場に立ったサービスを提供していると言えます。
4. 料金体系が明確で分かりやすいか?
税理士報酬は、トラブルになりやすいポイントの一つです。
面談の際に、料金体系について明確な説明を求めましょう。
| 確認すべきポイント | 説明 |
|---|---|
| 基本報酬 | 遺産総額に応じて設定されていることが多いです。 |
| 加算報酬 | 土地の評価、非上場株式の評価、相続人の数など、特別な作業に対して追加される費用です。 |
| その他実費 | 戸籍謄本の取得費用や交通費など。 |
| 見積書の提示 | 契約前に、総額が分かる詳細な見積書を提示してくれるかを確認しましょう。 |
ホームページに料金表を明示している事務所や、初回の面談で丁寧に見積もりの説明をしてくれる事務所は、誠実である可能性が高いです。
5. 親身に話を聞き、分かりやすく説明してくれるか?
相続は、税金の問題だけでなく、ご家族の感情も絡むデリケートな問題です。
こちらの不安や疑問に親身に耳を傾け、専門的な内容をかみ砕いて分かりやすく説明してくれるかどうかは、非常に重要なポイントです。
高圧的な態度をとったり、質問しづらい雰囲気を作ったりする税理士は避けるべきです。
信頼関係を築ける「人柄」も、大切な見極めポイントと言えるでしょう。
6. 二次相続まで考慮したシミュレーションを提示してくれるか?
一次相続だけでなく、二次相続まで見据えた長期的な視点でアドバイスをくれるかを確認しましょう。
【質問例】
「今回の相続だけでなく、次に母(父)の相続が起きた場合のことも含めて、最適な分割方法を提案していただけますか?」
複数の遺産分割パターンを提示し、それぞれのメリット・デメリットをシミュレーションしてくれる税理士は、真に依頼者の利益を考えてくれる専門家です。
7. 他の専門家との連携体制は整っているか?
万が一のトラブルに備え、他の専門家との連携体制についても確認しておくと安心です。
【質問例】
「もし遺産分割で揉めてしまった場合、信頼できる弁護士の先生をご紹介いただくことは可能ですか?」
「不動産の相続登記についても、ワンストップでお願いできる司法書士の先生はいらっしゃいますか?」
スムーズな連携が期待できる事務所であれば、相続に関するあらゆる手続きを安心して任せることができます。
相続税に強い税理士の探し方【具体的な4つの方法】
では、実際に相続税に強い税理士はどのように探せば良いのでしょうか。
主な方法を4つご紹介します。
1. インターネットで専門サイトや事務所HPを検索する
最も手軽な方法です。
「相続税 税理士 〇〇(地域名)」などのキーワードで検索すると、多くの税理士事務所が見つかります。
その際は、ホームページの内容をよく確認し、「相続税専門」「相続税の申告実績〇〇件以上」といった記載があるか、前述のチェックポイントを満たしているかを吟味しましょう。 相続税に関する書籍を出版しているかどうかも、専門性を見抜く一つの判断基準になります。
2. 税理士紹介サービスを利用する
税理士紹介サービスは、あなたの状況や要望をヒアリングした上で、条件に合う税理士を無料で紹介してくれるサービスです。
自分で探す手間が省け、一定の基準をクリアした税理士が登録されているため、質の低い税理士に当たるリスクを減らせるメリットがあります。
こうした紹介サービスは数多くありますが、例えば全国の税理士を無料で探せるマッチングサイトの「税理士ベスト」のようなプラットフォームを活用するのも一つの方法です。
相続税に強い税理士を地域や相談内容から絞り込んで探すことができ、複数の候補を比較検討する際に役立ちます。
3. 金融機関(銀行・信託銀行)からの紹介
取引のある銀行や信託銀行に相談すると、提携している税理士法人を紹介してくれることがあります。
特に、遺産総額が大きい場合や、複雑な案件に対応できる大手税理士法人を紹介されるケースが多いです。ただし、紹介料が報酬に含まれている場合があるため、費用が割高になる可能性も考慮しましょう。
4. 知人や親族からの紹介(注意点あり)
知人から紹介してもらう方法は安心感がありますが、注意も必要です。
その知人が依頼したのが「法人税」の顧問契約だった場合、その税理士が「相続税」にも強いとは限りません。 また、万が一相性が合わなかった場合に断りづらいというデメリットもあります。紹介された税理士であっても、必ず一度面談し、ご自身の目で確かめることが重要です。
税理士への相談から依頼までの流れと費用相場
相談から依頼までの4ステップ
一般的に、税理士への相談から依頼までは以下の流れで進みます。
- STEP1:無料相談の予約
多くの事務所では、初回無料相談を実施しています。電話やウェブサイトのフォームから予約をしましょう。 - STEP2:初回面談
財産状況が分かる資料(固定資産税の課税明細書、預金通帳など)を持参すると、話がスムーズに進みます。 ここで、前述の「7つのチェックポイント」を確認し、信頼できる税理士かを見極めます。 - STEP3:見積もりの提示と契約
面談内容に基づき、詳細な見積書が提示されます。内容に納得できれば、契約を締結します。 - STEP4:申告業務の開始
契約後、税理士による財産評価、遺産分割協議のサポート、申告書の作成などが進められます。
気になる税理士費用の相場は?
税理士報酬は現在自由化されていますが、一般的には「遺産総額の0.5%~1.0%」が相場と言われています。
多くの事務所では、遺産総額に応じた基本報酬に、土地評価などの作業に応じた加算報酬が上乗せされる料金体系を採用しています。
【報酬例:税理士法人A社の場合】
| 遺産総額 | 基本報酬額(税抜) |
|---|---|
| ~5,000万円 | 30万円 |
| ~7,000万円 | 40万円 |
| ~1億円 | 55万円 |
| ~2億円 | 85万円 |
| ~3億円 | 130万円 |
※上記はあくまで一例です。
※別途、土地評価や相続人の数に応じた加算報酬が発生する場合があります。
報酬が安すぎる事務所は、経験の浅い担当者が対応したり、必要な調査を省略したりする可能性があるため注意が必要です。 料金だけでなく、サービスの質や内容を総合的に判断することが大切です。
よくある質問(Q&A)
Q1. 税理士に相談する最適なタイミングはいつですか?
A. 相続発生後、できるだけ早いタイミングでの相談をおすすめします。
相続税の申告・納付期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。 この期間は長いように見えて、財産調査や遺産分割協議など、やるべきことが多くあっという間に過ぎてしまいます。 四十九日法要が終わった頃など、少し落ち着いた段階で一度専門家に相談することで、その後の手続きを計画的に進めることができます。
また、生前のうちから相談しておけば、より効果的な節税対策(生前贈与など)を講じることが可能です。
Q2. 遺産が基礎控除以下でも税理士に相談すべきですか?
A. 迷ったら一度相談することをおすすめします。
相続税には「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という基礎控除額があり、遺産総額がこれを下回れば申告・納税は不要です。 しかし、ご自身での財産評価が間違っている可能性もあります。特に土地の評価は複雑で、思ったより評価額が高くなることもあります。
また、「小規模宅地等の特例」など、申告をしないと適用できない特例もあります。 申告が必要かどうかを正確に判断するためにも、専門家の意見を聞く価値は十分にあります。
Q3. 複数の税理士に相談(相見積もり)しても良いですか?
A. はい、問題ありません。むしろ推奨します。
大切な財産に関わることですので、複数の税理士と面談し、比較検討することは非常に重要です。
それぞれの税理士の提案内容、見積もり、そして何より「人としての相性」を比較し、最も信頼できると感じた税理士に依頼しましょう。
まとめ:最適な税理士は、円満な相続を実現するパートナー
相続税申告は、単なる税金の計算手続きではありません。
ご家族が故人の想いを受け継ぎ、円満に次のステップへ進むための重要なプロセスです。
そして、相続税に強い税理士は、そのプロセスを専門知識で力強くサポートし、納税者の権利を最大限に守ってくれる、いわば「パートナー」のような存在です。
今回ご紹介した「一般の税理士との違い」や「見分けるための7つのチェックポイント」を参考に、ぜひあなたとご家族にとって最高のパートナーを見つけてください。
この記事が、不安を抱えるあなたの助けとなり、後悔のない円満な相続の実現に繋がることを心から願っています。