最終更新日 2026年11月6日
中小製造業の工程改善をお手伝いしている宮下です。
前職では自動車部品メーカーの生産技術部に18年いて、2液の接着やシーリング工程の立ち上げを何度も担当しました。
手塗りから装置に切り替えた現場を見てきて感じるのは、つまずく場所がだいたい決まっていることです。
装置の性能が足りないケースはむしろ少なく、導入前の準備で差がつきます。
手塗りのコツを数字にしていない
ベテランが塗ると不良が出ないのに、装置にすると出る。
こういうときは、ベテランが無意識に調整していた条件を誰も数字にしていないことが多いです。
装置の条件を決める前に、最低でも次の項目は測っておきたいところです。
- 1個あたりの塗布量(重さで測ると早いです)
- ビードの幅と高さ
- 塗り始めと塗り終わりの位置
- 塗ってから貼り合わせるまでの時間
この数字がないと、装置メーカーに相談しても「どのくらい出せばいいですか」で話が止まってしまいます。
塗る前の表面がそろっていない
装置にすると塗布量はそろいますが、ワークの表面の状態までそろうわけではありません。
Eurofinsの塗装・接着剥がれの原因分析には、端子に接着剤が付かない原因を調べたところ、フッ素系の有機物を含む洗浄剤の残りだったという事例が載っています。
保管用トレーの表面のシリコーンが部品に移り、塗装が剥がれた事例もあります。
自動化直後に不良が出ると装置を疑いがちですが、洗浄や保管の方法も確かめてください。
材料を見ずに装置を決めてしまう
2液の材料は、性質によって合う装置が変わります。
私は打ち合わせのとき、次の表の左側を先に材料メーカーへ確認するようにしていました。
| 材料の性質 | 装置選びで確かめること |
|---|---|
| 粘度、フィラーの有無 | ポンプの方式が材料に合っているか |
| 主剤と硬化剤の混合比 | 比率を固定するか、変えられるようにするか |
| 可使時間 | 止めている間に硬化が進んだときの対策 |
| 使う場所の温度 | 夏と冬で吐出量が変わらないか |
方式ごとの違いをつかむなら、ナカリキッドコントロールの2液型の塗布用ディスペンサー一覧がわかりやすいです。
比率可変式と固定式、プランジャポンプ式とギアポンプ式などを見比べられます。
同社は条件に合う機種を提案してもらえる商品選定や、導入前に試せるテストルームの申し込みも受け付けています。
自社の材料とワークを持ち込んで試しておくと、カタログだけで決めるより失敗がずっと減ります。
いきなりライン全体を変えようとする
MONOistの連載「中堅中小製造業の自動化 虎の巻」第1回では、社長の一声で急いで見積もりを取り、ロボットを入れてしまう例が挙げられています。
そのうえで、無理をせず段階的に導入していくことが基本だと述べています。
接着工程も同じです。
まずは不良が多い工程か、作業者の負担が大きい工程を1つ選び、そこだけ装置にします。
立ち上げで集めた条件の数字は、次の工程に広げるときの土台になります。
まとめ
接着・シーリング工程の自動化でつまずくのは、装置を入れる前の準備が足りないときがほとんどです。
手塗りの条件を数字にする、表面の状態をそろえる、材料の性質から装置を選ぶ、1工程から始める。
この4つを押さえておけば、立ち上げの手戻りはかなり減らせます。
迷ったら、実際の材料で試してから決める。
遠回りに見えて、これがいちばん早い進め方です。